白砂林の紹介(一般向け紹介)
2021-03-30
白砂ができるわけ
日本の森林の土は通常、黒や茶色ですが、世界の森林の土には白いもの(白砂)もあります。白砂は石英が主成分であるため白く見えます。植物遺体(落葉など)から染み出した有機酸が、鉄やアルミニウムを溶かし、結果的に酸で溶けにくい石英が残ることで白砂は生じます。また、白砂の下には溶け出た鉄やアルミニウムが集積した赤っぽい土壌層がしばしば生じます。このような土壌生成過程をポドゾル化と呼びます。熱帯では、平坦で滞水しやすい土地においてポドゾル化が生じやすく、白砂林がしばしば成立します。
白砂生態系の植生の特徴
白砂は、水保持力や栄養に乏しいため、細く、樹高の低い特徴的な森林が成立します。貧しい栄養環境に耐えることのできる球果類(マツの仲間)や、昆虫などを捕食することで栄養を得るウツボカズラの仲間が豊富に見られます。
白砂生態系の動物の特徴
白砂生態系には、その独特の植生に伴って、特徴的な動物が見られます。特に鳥類の研究が進んでおり、鳥類の多様性は他の森林に比べて低いものの、白砂生態系でしか見られない鳥類種が多くいることがわかってきています。
白砂生態系と人々の関わり
白砂の土壌は、栄養が少なく、水の浸透性(水はけ)が悪いため、大規模な灌漑や肥料なしでは、農業には向きません。ボルネオ島では、白砂の土地を「稲の育たない土地」という意味のkerangas(ケランガス)と呼んでいます。従来は農地開発を回避してきましたが、近年は平坦な地形なため開発が進んだり、肥料の大量投入によって農地転換されたりしており、急激に白砂林は減少しています。もともと生産性の低い独特の生態系であるため、一度破壊されていまうと、その回復は非常に難しく、何百年も必要だと考えられています。